SecHack365での1年間を振り返って
こんにちは、newtです。先日秋葉原で2024年度のSecHack365成果報告会があり、晴れて修了生となることができました。記憶が風化してしまう前に、トレーニーとして参加した1年間で感じたことや考えたことを記しておこうと思います。
ここでは主にSecHack365のプログラムについてお話しします。なお、開発した作品については別記事にまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。
SecHack365とは
この記事をご覧の方には既にご存じかもしれませんが、SecHack365はNICT(情報通信研究機構)が主催する、25歳以下を対象としたセキュリティイノベーター育成プログラムです。
Security × Hackathonという意味合いから「SecHack」と名付けられていますが、表現駆動コースを除けば、一般的なハッカソンとは毛色が異なり、1年間かけて一人で一つの作品を作り上げるのが特徴です。
採択されるトレーニーは年間約40名で、その中でコースは「表現駆動」「学習駆動」「開発駆動」「思索駆動」「研究駆動」の5種類に分かれています。私は開発駆動コースで、さらにトレーナーごとに「川合ゼミ」と「仲山ゼミ」の2つがあり、私は仲山ゼミに所属していました。
仲山ゼミでの活動
コースごとに活動頻度は異なりますが、仲山ゼミでは毎週1回、オンラインでその週にやったことを共有する時間がありました。ここでは、YWTというフレームワークを使って振り返りを行います。YWTとは、Y(やったこと)、W(わかったこと)、T(次にやること)の3つの軸で自分の活動を整理する手法です。
定例ゼミでは、この振り返りをもとにトレーナーからフィードバックをいただくことができます。トレーナーはいつも「えらい!」「いいね!」などのポジティブな言葉をかけてくださり、とても励みになっていました。また、悩んでいるポイントについてフラットに相談すると、具体的な技術だけでなく設計や方向性などに関するアドバイスを頂けることが多く、私にとって大変参考になりました。
トレーニー同士の交流
ゼミでの活動とは別に、2日〜3日間にわたって行われる全6回のイベント回がありました。今年は2回がオンライン、4回がオフラインで実施されました。
オフライン回では、同期のトレーニーと一気に仲良くなることができました。私はずっと個人開発をしていて、他のエンジニアと交流する機会が少なかったため、技術について語り合える同年代の仲間ができたことは非常に嬉しかったです。
よく言われていることですが、SecHack365の最大の魅力はコミュニティに入れることだと思います。同期のトレーニーとの交流もそうですが、修了生が集まるイベントが年に1回開催されているほか、イベント回や成果発表会で過去の修了生が遊びに来てくれることもあり、上下のつながりも多いと感じます。
作ったもの
成果発表会で私が披露したのはUIコンポーネントライブラリですが、最初からこのライブラリを作ろうと決めていたわけではありません。応募当時、ブラウザが提供するWeb APIに興味を持っていたため、それを活用した新しい作品を作ろうと考えていました。
しかし、「新しい作品」を作るという目標は非常に漠然としており、最初はかなり迷走してしまいました。とりあえず手を動かそうと、第2回イベントでは地球の裏側を覗けるWebアプリなどを作っていましたが、発展させるためのビジョンが見えなかったため、改めて別のテーマで開発することにしました。
最初からテーマが明確に決まっているに越したことはありませんが、途中でテーマを変更できる柔軟さには本当に感謝しています。結果として、成果発表会のテーマは自分でも面白いと思えるものにすることができました。
開発したライブラリについては今後も開発していく予定なので、ぜひチェックしてもらえればと思います。
きっかけ
そもそも、応募当時の私はセキュリティ分野に深く関わっていたわけではありませんでした。同期の中には普段からCTFやHack the boxなどに取り組む人が多かった一方、私はWeb開発をメインにしていたため、正直なところ会話についていけない部分もありました。
ところで、IT系の学生を対象としたプログラムはSecHack365以外にも多数存在します。例えば、24歳までを対象とする未踏事業やセキュリティ・キャンプ、高校生までを対象とする情報科学の達人や未踏ジュニアなどです。
私がこれらのプログラムの存在を知ったのは高校2年生の12月頃でした。その頃、SNSで輝かしい実績を持つ同年代の人たちの姿を目の当たりにしました。「自分もああなりたい」という焦燥感に駆られ、高校3年生でも参加可能な未踏ジュニアに応募しましたが、残念ながら面接に落ちてしまいました。
その後1年が経ち、大学に入学。受験期と比べて時間的余裕ができたため、今度こそという思いで様々なプログラムに応募し、その一つがSecHack365でした。
実績偏重からの変化
正直なところ、昨年の春までは「何らかの実績がほしい」という気持ちが強かったのだと思います。昔から自己肯定感が低く、同年代で活躍する人々に対してある種のコンプレックスを抱いていました。
しかし、この1年間でSecHack365をはじめとする様々な経験を通して、この考え方は大きく変わったと感じています。公募に応募するモチベーションがあるという点は変わりませんが、その動機が「かけがえのない経験を積むため」という理由に変わっていきました。
もちろん「SecHack365の修了生」という実績が得られたという事実が理由の一つでもあるのですが、それ以上に大きかったのは視野が広がったからだと思っています。ひとくちにIT分野といっても専門の幅は非常に広く、そのすべてに精通することなど困難です。この1年間で、人それぞれ得意な分野があれば苦手な分野もあり、ナンバーワンになる必要はないということに気づきました。特にSecHack365では自分とは異なるレイヤーに触れているトレーニーが多く、最初は自分の技術力のなさに苛まれていましたが、しばらく話をしていると、自分がより得意な分野も見つかってきて、これを強く感じました。
「世界をちょっとだけ良くする」とは
話は変わりますが、トレーナーが最初のゼミで「世界をちょっとだけ良くしよう」という話をしていました。私はこの言葉がとても好きで、SecHack365の「習慣化」というプログラムで作成するマンダラートの真ん中にも書いていました。
80億以上の人が生きる現代において、世界を変えられるのはごく一握りの人だけです。もちろん私はそれを目指す人々はカッコいいと思っているし、大きな夢に向かって行動できる人のことは尊敬しています。
しかし、世の中には大きな変化に対して忌避感を示す人もいます。そうした反対意見に対処するまでしてまで世界を良くしようという気概は、正直なところ私にはありません。
これはあくまで私なりの解釈ですが、「ちょっとだけ」良くするというのは、必ずしも大きなことを成し遂げる必要はなく、身近な人や限られた特定の人へ届けることから始めてみよう、という意味だと思っています。独りよがりな考え方かもしれませんが、私は日々の行動でこれを軸にしてみることで、ちょっと気持ちが明るくなると思いました。
むすびにかえて
修了してから1ヶ月が経過しましたが、SNSやコミュニケーションツールを通じて、同期のトレーニーがさまざまな場所で活躍しているのを目にします。1年前は全く知らなかった人たちが頑張っている姿を見ると、自分も負けていられないという気持ちになります。
技術力向上という目的だけでなく、視野を広げたり、かけがえのない経験が得られるという意味でもとても良いプログラムなので、もし応募に迷っている方がいれば、まずは一度応募してみることをおすすめします。